アナトリーはなぜ「細身なのに重いものを持ち上げられる」のか?

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ウクライナ出身のパワーリフター兼クリエイター、アナトリー(Anatoly)は、世界中の視聴者を驚かせてきました。
彼の動画では、掃除員の格好をした細身の青年が、突然200kg級のバーベルや尋常でない重さのモップ・バケツを軽々と持ち上げ、周囲を唖然とさせます。

しかし、視聴者のほとんどがまず思うのは、

「あの細さで、どうしてあんな重量を持てるの?」

本記事では、その理由を“上辺の筋肉量”ではなく、身体科学・力学・神経系・技術といったリアルな視点から深掘りします。

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ポイント①:筋肉より“神経”が力を決める

アナトリー 細身 強い理由

筋力は「筋量 × 神経の使い方(動員)」で決まる割合が大きい。筋量が十分でなくても、神経系の適応だけで大きな出力を発揮できる。

  • 運動単位の動員(同期性):筋繊維は運動単位という単位で動く。ある運動でどれだけの運動単位を同時に働かせられるかが出力に直結する。高頻度で大きな筋肉出力を繰り返すトレーニングは、筋繊維の同時動員能力を高める。
  • レートコーディング(発火頻度):同じ運動単位でも、より短い間隔で神経が信号を送る(発火頻度が高い)と瞬間的な力が増す。重い1回を扱うパワー系トレーニングはこれを促進する。
  • 抑制の解除:筋の作用を抑える神経的抑制(例えばGolgi腱器官の反応など)は学習で部分的に制御できる。競技者は高負荷に慣れることで抑制をうまく回避していることが多い。

アナトリーは幼少期から高負荷を繰り返しているため、筋繊維を効率よく動員し瞬発パワーを発揮する神経回路が強化されていると考えられる。

ポイント②:筋密度が高い=見た目以上のパワーが出る

外見が細く見えても、皮下脂肪が少なく、筋の“深層”や付着の仕方によっては実際の筋断面積(PCSA:生理学的断面積)が大きいことがある。

  • 筋アーキテクチャ(繊維長・ペネーション角):筋線維の走行角度(ペネーション)が大きい筋は、小さい見た目でも高い力を発揮しやすい。逆に線維長が長い筋は速度に有利だが見た目の太さと一致しない。
  • 速筋(Type II)優位:瞬発力に寄与する速筋繊維が多ければ、外見の“薄さ”に反して大きな瞬間出力を出せる。

筋肥大(サイズ)を目的にしない高負荷トレーニングは、筋の「見た目」を大きく変えずに力を伸ばすことができる。

ポイント③:腱と結合組織の使い方が異常にうまい

筋の力を骨に伝える腱・靭帯の性質(剛性・弾性)が高いと、筋力が効率的に発揮される。腱は「蓄えた弾性エネルギーの再利用」にも寄与する。

  • 腱の剛性(stiffness):剛性の高い腱は筋収縮の力をロスなく骨に伝える。反面、やや剛性が高すぎると怪我リスクが上がるが、競技者はそれを補う強靭さを持ちやすい。
  • ストレッチ・ショートニング・サイクル(SSC):筋と腱は伸張-短縮サイクルで反発力を生む。効率的に利用できれば、同じ筋出力でも“より重く感じさせる”仕事ができる。

日常的に重い物を扱うような生活や、長年の高負荷トレーニングは腱の強化に寄与する。アナトリーが幼少期から体を使っていた環境はこの点で有利だった可能性がある。

ポイント④:テクニック(フォーム最適化)がズバ抜けている

同じ人が同じ筋力で異なったフォームでウェイトを行うと、違いが明らかに現れる。効率的なフォームは「力のロス」を減らし、てこの原理を最大限に活かす。

  • バー軌道の短縮:デッドリフトでバーを最短距離で動かすことは重要。余計な動きがあるとエネルギーロスになる。
  • 関節のタイミング:膝と股関節の開閉タイミング(いつ腰を伸ばすか等)を最適化することで、最大トルクを生むことができる。
  • 身体の“連動”:胸郭・脊柱・股関節・膝・足首が協調して働くと力が一直線に伝わる。

アナトリーは繰り返し実践することでフォームの細部(微小角度や呼吸タイミング)を身体化しており、見た目の筋量とは別に高効率な力発揮が可能になっている。

ポイント⑤:普段から重量を扱っている“リアルの蓄積”

幼少期から「本物の重さ」を扱う生活や、自作器具でのトレーニング経験は、筋・腱・神経・技術を同時に育てる。

  • 生活負荷による適応:日常的に重い物を扱う習慣(農作業・荷物運び等)は、筋肥大よりも“実用筋力”と腱の強化に直結する。
  • “不安定で変化する負荷”の経験:重さが一定でないもの(バケツの水、変形した鉄塊など)を扱うことで「力の調節能力」が発達する。

アナトリーの自作ジムや農村での経験は、この「実用的な強さ」の養成に大きく寄与してきたと考えられる。

ポイント⑥:細身=自重比が高いメリットも存在する

体重に対する相対的な力(相対強度)が高いと、多くの動作で有利になることがある。細身の選手は高い出力を体重あたりで発揮しやすい。

  • 相対強度:体重が軽いほど、同じ絶対重量を扱ったときに体重比(例:デッドリフト/体重)が高く見える。相対的なパフォーマンス指標が高いのはモチベーションにも好影響。
  • 可動域とスピード:細身で柔軟性があると、動作の速度や可動域で有利になる場面も多い。

まとめ:アナトリーの強さは“複合的適応”の産物

アナトリーが「細身なのに重いものを持ち上げられる」のは単一要因ではなく、神経系の高効率、筋アーキテクチャ、腱の強さ、骨格的有利さ、技術、実生活での反復経験、心理的な高揚が合わさった結果です。これらは「偶然」ではなく、長年の経験と意図的な練習によって育まれます。

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ゴロゴロをモットーにゆる〜くブログを書いています。学生の頃にメモ代わりに始めた「柔整師のゴロ合わせ」は試験勉強する学生たちの役にたっているはず!

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