ウクライナ出身のパワーリフター兼動画クリエイター、アナトリー(Anatoly)。
彼の動画を見ると、多くの人がこう感じます。
「細身なのに、なぜあれほど重い重量を“軽そうに”扱えるのか?」
その答えは、筋肉量の多さだけでは説明できません。
鍵となるのは、身体操作の精度と運動単位(モーターユニット)の使い方です。
本記事では、パワーリフターの視点から、アナトリーの“強さの中身”を解説します。
ウクライナの怪力パワーリフターAnatoly(アナトリー)とは?
筋肉が「動いている」のではなく「使われている」
一般的に「力が強い=筋肉が大きい」と考えられがちですが、
パワーリフティングではそれは半分正解、半分不正解です。
実際に力を生むのは、
- どの筋肉を
- どの順番で
- どのタイミングで
- どれだけ動員できるか
という神経系のコントロールです。
アナトリーは、ここが非常に優れています。
運動単位とは何か
運動単位(モーターユニット)とは、
1本の運動神経 + その神経が支配する筋線維の集合
のことです。
- 軽い力 → 少数の運動単位だけが働く
- 重い力 → 大きく強い運動単位まで総動員される
重要なのは、
「どれだけ多く、どれだけ一気に動員できるか」。
アナトリーは、見た目に反して
高閾値(パワー系)運動単位を瞬時に動員できるタイプだと考えられます。
アナトリーの動きが“無駄に見えない”理由

彼のリフトや小道具パフォーマンスを見ると、
- フォームが崩れにくい
- 反動が少ない
- 動作が短く、直線的
という特徴があります。
これは、
- 関節位置を正確に把握する感覚
- 体幹を固めた状態で四肢を動かす能力
- 主働筋・協働筋・固定筋の同時動員
が高いレベルで成立している証拠です。
結果として、
「必要な筋肉だけが、必要なだけ働く」
=エネルギーロスが極端に少ない動作になります。
細身でも強い理由①:力の“逃げ道”を作らない
筋力発揮で重要なのは、
「どれだけ出すか」以上に「どれだけ逃がさないか」です。
アナトリーは、
- 足 → 骨盤
- 骨盤 → 体幹
- 体幹 → 上肢
という力の伝達ラインが非常に明確です。
そのため、
- 見た目ほど筋肉量がなくても
- 出力が途中で分散せず
- 重量がそのままバーや小道具に伝わる
結果として「軽く見える」動作になります。
細身でも強い理由②:瞬間的な最大動員
アナトリーの特徴は、
力を“溜める”より“即座に出す”タイプである点です。
これは、
- 高重量トレーニング
- 神経系優位の反復
- パワーリフティング的動作学習
によって培われます。
一瞬で多くの運動単位を動員できるため、
- 初動が速い
- 動き出しで重量に負けない
- 見ている側が「急に持ち上がった」と錯覚する
という現象が起こります。
小道具パフォーマンスとの関係性
32kgモップや重いバケツといった小道具は、
筋力そのものを誇示するためというより、
- 身体操作の巧さ
- 出力効率の高さ
- 見た目とのギャップ
を最大限に演出するための装置です。
つまり、
「特別な筋トレをしている人」ではなく
「力の使い方が異常にうまい人」
という印象を強める役割を果たしています。
アナトリーの小道具徹底解説(32kgモップ・バケツ・掃除道具)
パワーリフター視点での結論
アナトリーの強さは、
- 筋肥大よりも神経適応
- 筋量よりも運動単位の動員効率
- 重さよりも身体操作
に強く依存しています。
これはまさに、
競技系パワーリフターが最終的に行き着く身体の使い方です。
彼が「細身なのに強い」のではなく、
「無駄なく力を出せるから、細身に見える」
と考える方が正確でしょう。




